ホシナの投稿 9

ホシナの投稿 9

あるじのおでん

あるじの鈴木さんは、よく料理をつくってくれる。

むかしむかし、BC工房が渋谷の青葉台にあった頃、
ウッドデッキで餃子や焼きうどんをつくって振るまってくれた。
牛テールスープをつくってくれたこともある。

定番のひとつはおでん。大根は必須で、タネの種類はそんなに多くなかったように思う。
10人分以上だから、鍋はでかい。
打ち合わせやランチの帰り道に材料を仕入れてきて、いつのまにか仕込みを始めている。
「お、今日はおでんだ」ではなく、「やや、明日はおでんだ」。

鈴木さんのおでんづくりは前日から始まる。
「煮込めば何でもうまくなるんだよ」と言ったことを覚えている。

鈴木さんの料理は、お店の料理人がつくるような料理ではないのだが、独特のおいしさを味あわせてくれる。

いや、お店をやっていたこともある。シチュー専門「野山の食堂」を開き、食堂のあるじをやっていた。
最初にいただいたのはビーフシチューだったが、
その次にいただいたのは地元の猟師さんからわけてもらったという猪のシチューだったような。
そのときも「煮込めば何でもうまくなるんだよ」と言って、さらに鹿肉や熊肉でもつくっていたような???
これは記憶にオヒレがついたのかな。
なにしろ無手勝流のシチュー屋のあるじだった。

「煮込めば何でもうまくなるんだよ」は、じつはちょっと違う、と思う。
鈴木さんは、うまくなるまで煮込む。うまくなるまで、けっこう試行錯誤している。
近寄り難いがたい顔をして鍋に向かっているのを見たこともある。
じっくりうまくなるのを待つだけでなく、あれこれあの手この手をほどこしているに違いない。
おでんもシチューも何度かごちそうになっているが、材料もつくり方も毎回違うんじゃないだろうか。
というか、つくりながらつくり方を考え、つくりながらつくっている、のかも。

「できたぞぉー」と呼ばれていだだくと、うまーい。
「鈴木さん、おいしいです」というと、にんまりと口元がゆるみ目尻がさがる。

鈴木さんのおでんづくりと家具づくりは、似ているかも。

hocna

あるじのシチュー

あるじの自家製ベーコン

あるじの焼き芋

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