ホシナの投稿 8
あるじの劣等生
あるじの鈴木さんは、木材の仕入れのために、木の市に出かける。
木の市には、銘木屋さんといわれるような人や、家具メーカーなどが集まり、
競りで目当ての品を落とすために競り合うのだそうだ。
同じ市に出かけるK村さんからあるとき聞いた話。
「鈴木さんはな、なんかワイらが目向けんような、どうやって使うんいうヘンな木に手挙げるんよ」
木の市に並ぶ材の主役は、大きな一枚板だ。
銘木屋さんたちが目を光らせるやつだ。値段も高い。最近はさらに高いそうだ。
K村さんが、「こない値上がったら、もう家具には使えんでぇ」というくらい。
鈴木さんが手を上げるのは、鈴木さん曰く「劣等生」の無垢板だという。
寸タラズ。フシやワレがある。珍妙なカタチ。グネグネ。
いわゆる立派な一枚板天板にはならない無垢板たちが劣等生だ。
鈴木さんは、「BCは無垢板をデザインするんだ」という。
優等生の板ならば、削って、磨いて、塗装仕上げをすれば立派な天板になる。
しかし、劣等生たちは、手と知恵を加えることで楽しい家具になる。
劣等生であればあるほど、デザインする甲斐があるのだ。
劣等生は、「どうだ、こんな木を使えるのか」と、鈴木さんを挑発しているのかもしれない。
優等・劣等は、あくまで市や銘木屋さんの価値基準だ。
寸タラズでも珍妙なカタチでも、素性は変わらない天然の無垢板。
劣等生は安いというだけでなく、人の手と知恵を受け入れる材だから鈴木さんは手を挙げるのだと思う。
ぶじのリビングアートギャラリーには、こうした劣等生が、
ユニークで楽しい家具になって並んでいたり、
無垢板ギャラリーには、変木珍木コーナーも設けられている。
誤解のないよう言っておきたいのは、
驚くほど立派な一枚板や、どうやって運ぶの? といった長大な無垢板なども、
BC工房はしっかり揃えている。
優等生だけがが目立つということがないだけだ。いや、優等生と劣等生の区別がない。
デザインしてナンボ。家具になってナンボ。なのだと思う。
hocna