私のMUKUモノがたり 「陰翳礼賛」

今週の新作テーブルが、なかなか、ヤバイです。

トチの木の、「ハーフムーン」テーブル。

半月のようなカタチ。

表面は、今や自然遺産とも言えるトチの美しい杢がゆらめく。

夕暮れの湖の水面のようなゆらめきが、トチの最高の杢です。

その杢を最大限感じられるように、BCではめずらしく、全艶しあげ。

「杢」というのは、木の繊維が成長の際に、よじれたり、しなったり、

ストレスを受けながらも、育ち切った時に生まれる、反逆の証、でしょうか。

斜面に立つ曲がった木や、枝が二股に分かれる所に、

生きる力をみなぎらせたような「杢」が生まれます。

「ハーフムーン」と呼びたくなったのは、

天板のカタチだけでなく、

サイドエッジ、裏面、そして脚が、

月の裏側の岩場のようにザックリとしたテクスチャ―で、

影をまとうかのように、黒味を帯びているからです。

陰翳礼賛。

光輝く表面の裏側には、

同じ遺伝子をもちながらも、光の当たらないダークサイドがある。

しかし、

裏側には、秘密のアートワークが施されています。

もしかしたら、

「裏側」というのは仮の姿で、光の当たりぐあいで、陰翳逆転。

一気に輝く時がくるのかもしれません。

表裏一体。色即是空。空即是色。

H鋼の脚は、黒のエイジング仕上げ。

無垢板という自然を、

人が道具として生かそうという思いの現れのようです。

いろいろ深読みしたくなる、

「ハーフムーンテーブル」。

ただ、このテーブルに何かを感じる方に使ってほしい。

そんな一卓です。

青山BC工房

KAZU